コンセプト
CONCEPT

事業化判断テーマ

医薬化合物結晶成長・反応制御

中村 栄一(東京大学大学院理学系研究科)・東和薬品株式会社

東和薬品株式会社
「創薬プロセスイノベーション」の概要

東和薬品株式会社は、東大COI拠点において、「創薬プロセスイノベーション」の実現を目指し、東京大学大学院理学系研究科・中村教授とともに、結晶制御、合成技術をプラットフォームとする以下の研究テーマを推進しています。

【研究テーマ】

  1. 東京大学が有する最先端の電子顕微鏡を有効活用し、多品種の医薬品に対して、製剤に適した原薬の固体物性(結晶形や粒度など)を自由にコントロールする革新的な「分子制御技術」の確立
  2. 効率的な新規合成法の開発に向けた「不斉合成技術」の確立

これらの技術をオールジャパンで確立し、日本の医薬品産業の強化に向けて必要な基盤技術を発展させることで、健康長寿社会の形成に貢献します。

「創薬プロセスイノベーション」の概要

原薬からはじまる蓄積された独自の製剤技術により製造された、低価格で高品質なジェネリック医薬品を「基盤医薬品」※として提供します。これにより、国民負担の軽減のみならず、薬物治療における“飲みにくさ”など医薬品の適正使用の課題軽減を目指し、医療の質の向上に貢献します。

※基盤医薬品とは

  1. 治療上有用であり、各疾患領域で必須
  2. 低価格で飲みやすいなど、国民(患者さん)にとって有益
  3. 完成された高い製品品質

わすれなびと(認知症対応テーマ)

辻 省次・岩田 淳(東京大学医学部附属病院)・エーザイ株式会社

エーザイ株式会社
認知症・軽度認知障害の方やそのご家族のためのICTコミュニケーションツール「わすれなびと」

今後の認知症患者の爆発的な増加に伴い、その診療に伴う社会的負担を軽減することが求められる。認知症の様々な症状はその患者の人生を反映した様々な多様性に富んでおり、Person-centered careの実践が最も重要な課題であるが、それは必ずしも容易ではない。また、今後のPersonal Health Recordの普及を考えた場合、高齢者、それも認知症以外に様々な慢性疾患を抱えていることが想定される患者群は適切なモデルとなり得る。「わすれなびと」は、これら二つの実現を目標とする、ICTを利用した新たなシステムの実証研究である。

わすれなびとでは、新たに開発したアプリケーションを搭載したiPadを被験者(認知症の方と同居ご家族:スタディーパートナー)へ貸与し、医師、薬剤師などのケアギバーと被験者の間での双方向コミュニケーションを実現した。具体的には、アンケート機能での日常生活動作の把握、日記帳機能での医療関係者との自由な質問・意見交換、東大病院内の一部の電子カルテ情報の被験者への公開、などである。また訪問薬剤師による服薬状況の管理も行った。わすれなびと研究は、東大病院における倫理委員会審査・承認を経て、1年間の期間にて、神経内科の通常診療に上乗せする形で実施された。

今回、我々は、わすれなびと臨床研究において認知症の方、そのご家族の方々を対象とし、認知症に関する遠隔医療の有用性について、その可能性を得た。特に、Activity-of-Daily Livingに代表される認知症の方の生活の状況をリアルタイムに医師、薬剤師などのケアキバーが知ることは、従来2-3か月に一度の10分間診療という現在の医療の質そのものを向上させる可能性が示された。一方で、いくつかの課題が顕在化した。すなわち介護者がご高齢である場合、必ずしもデジタルデバイスを使い慣れているわけではない。さらには認知症という難敵と闘っているストレスのなかで、いかに操作性に優れたアプリケーションといえども、使い始めるまでの精神的ハードルは我々の予想を超えて高かった。アプリケーションそのものをより使いやすいものへ改修する一方、本人、介護者の主体性に寄らず情報を入力できるシステム、すなわち家庭内におけるさりげないセンシング機能を付加することなどが解決策として見いだされた。たとえば、日中にベッドに横になる時間、台所や洗面所に立つ回数・時間、入浴の有無、などであり、このような日常行動の変化を察知、共有することから、いち早く認知症に伴う身体機能の変化(悪化)をケアギバーが把握し、適切な医療を提供することにつなげることが期待される。

東大COI:「自分で守る健康社会拠点」では、「病院を外来に、外来を家庭に、家庭で健康に」という拠点コンセプトのもと、入通院を医工学の科学技術によりドラスティックに減らし、その過程で新健康医療産業を創出することを目指している。

我々は、わすれなびと臨床研究から得たナレッジをいかし、認知症発症期に認められる行動変化を早期に把握するシステムの構築に研究を発展させる。ここでは認知症の早期診断につながる予兆把握を可能にし、それに続く受診勧奨の仕組みづくりを到達目標とする。被験者は認知症を憂う、つまりまだ認知症を発症していない(認知機能正常な)中年期~高齢者とする(デジタルデバイスの活用も可能であろう)。認知症予兆の早期把握と、それに続く東京大学医学部附属病院の物忘れ外来や認知症専門外来への受診勧奨の仕組みづくりを行う。予兆把握に加え受診勧奨というあらたな仕組みの構築によって、認知症分野における「自分で守る健康社会」の実現に貢献することを目標として我々は研究を推進する。

エビデンスに基づく健康指導・予防

新井 洋由(東京大学大学院薬学系研究科)・株式会社ハビタスケア

エビデンスに基づく健康指導・予防

薬学部新井教授と株式会社ハビタスケアは、東大COI拠点において、「シニアまで心身ともに健康な生活」の実現を目標に、ライフケアからシックケアまでシームレスに提供するサービスの事業化を進めてきました。

2014年~2016年に東大COIプロジェクトを通じて開発、実証、展開を進めてきた2型糖尿病予防サービスを起点に、ITを活用した「かかりつけ専門家」ヘルスケアサービスを提供する仕組みを構築中です。

また、サービス提供に必要なパーソナルデータ(ライフ(家族歴、生活スタイル等)/ヘルス(体重、血圧等)/メディカル(電子カルテ等))をユーザーの同意を得た上でユーザーに合わせカスタマイズして提供するヘルスケア事業展開を、各業界のトップランナー(生命保険会社、製薬会社、健保組合等)と連携して展開することを目指しています。